2032:STARRY-EYED - 2/3

「……お風呂行こ」

 彼がコートを脱ぐのを手伝いながら、ぼそりと呟く。だが、彼から返ってきた言葉は意外なものだった。

「このまま致すぞ」
「へ?」

 そうして怪我していない方の腕でぐいと私の手を掴み、ギルガメッシュはずんずんベッドのある方へ向かう。そうして自分だけさっさと靴を脱ぎ、「早くこっちに来い」と言わんばかりに手を伸ばしている。

「え、汗臭くない?」
「たわけ。──それを愉しんでこその肉の器であろうが!」

 ええ……私、今果てしなくどうでもいいことで怒られてる……? 反射的に胡乱な顔をしかけたが、彼にとってはどうでもよくないことらしいのできちんと考えてみる。電脳世界では汗等の生理的現象は発生しない。──いや、彼に対し冷や汗をかいたことはあるので正確には発生するのだろうが、自動的にそれらは消滅し一定の清潔さが保たれる。故に風呂に入らなくても別段問題はない。

 しかし、この現実世界ではもちろん別だ。汗はかけば臭うし、それを解消し身体を清潔にするには風呂に入る必要がある。

「……つまりいつもはできないことをしてみよう、と」

 ギルガメッシュの言葉を自分なりに翻訳して、とりあえず彼の言う通り私も靴を脱いでベッドに上がる。

「普段通りではつまらぬからな。そもそも片腕のままならぬ状態、というのが最早今の我にとっては新鮮でもある」

 確かに、こうして長い間怪我をしている状態の彼を見るのは初めてかも知れない。旅の途中戦闘になることも何度かあったが、基本的に電脳世界での怪我は回復薬を飲んで休めばすぐ元通りになる。やっぱり電脳世界って便利なんだなあ、と思い返しながら、私は彼の胸に額をくっつけてみる。

 ──どくどく、と鼓動が聞こえた。器の元は人形とはいっても、きちんと臓器まで再現されているのだろうか? 何だか安心して、彼に抱き着く。ギルガメッシュは何も言わずに私の髪を梳き、耳をいじった。くすぐったくて変な声が出ると、「ここが弱いのは変わらずか」と笑われた。

 押し倒されて、タートルネックの上から胸を揉まれる。……あまり揉み甲斐のない胸なのが自分では悲しいが、これも個性なので文字通り胸を張りたい。

「脱がなくて、平気……?」

 息が上がっていくのを自分でも感じながらギルガメッシュに訊ねる。肩を負傷した後、なるべく脱ぎやすい服を着るようにした彼だったがそれでも私が手伝った方が効率がいい。だが、彼は首を振って「このままで良い」と私のタートルネックをずり上げた。シンプルな下着が露出すると、すかさず背中に手を回してホックを外される。……片手なのに手際がよすぎる。呆れたらいいのか感心したらいいのかわからない。

「今更だけど明るいね……」
「今更だな」

 同意と共にギルガメッシュが私の乳首をつんと突っぱねた。「あっ」と声が漏れると、面白がって彼は私の身体をおもちゃにして遊び出す。──彼に何度身体を見られたかもうわからない。風呂だってよく共にするし、体を重ねたことも数えきれない程にある。だから急に恥ずかしがる意味はないのだが、状況が少し新鮮だからだろうか、それでも火照った今の私を見られることに何だか照れてしまった。

 怪我をしている肩に触れないように、起き上がって自ら口づける。やられっぱなしではいられない。粘っこい唾液が混ざり合って、人間の体液特有の臭いが立ち上る。……ああ、ギルガメッシュの言っていたことはこういうことだろうか。変な気分だけれど──野趣溢れる、という言葉の意味を漸く理解した気がする。

 唇を離して、くんくんと彼の耳元辺りを嗅いでみる。オリエンタルな──といっても、おしゃれには疎いからどういう香りと言えばいいのかわからない──香水と一緒に彼の体臭が混ざって独特な香りが鼻腔に拡がる。電脳世界で感じた香りとは随分異なるが、嫌いではない。「どうした」と問うギルガメッシュに何と返せばいいのかわからないまま、私は眉根を寄せた。

「ギル、臭う」
「閨であろうと首が飛ぶぞ?」
「いやごめん、そういう意味じゃなくて……何だろう」

 ぎらりと刃のように光った彼の瞳を何とかいなして考え込む。いい香りかどうかと問われたら、電脳世界で嗅いでいたときの方が何倍もいい。それなのに、何故だかこちらの方がもっと嗅いでいたいと思える。それは何故なのだろう。

「ギルのこの臭い、好きかも知れない」

 よくわからないままそう答えると、彼は何やら虚を突かれたような顔をして真顔になった後大声で笑い始めた。

「ははは、はははははは!」
「……何なのもー、人が真面目に答えたのに」
「貴様も無知なりに心得ているではないか。これこそ電子の世界では体験できぬまぐわいの醍醐味だ。人間の体臭は興奮を誘う。──故に」

 そこで言葉を切って、彼は私の手を掴み自分の股間を弄らせる。先程のよりも大きく硬くなっているそれに釘付けになりながら指を這わせていると、ギルガメッシュがふふんと鼻を鳴らした。

「貴様もよく臭うぞ」
「……そっかあ」

 じゃあ、それはいいことなんだろう。清潔か不潔かでいえば後者なのだろうが、今はそれよりも好奇と興奮が勝った。

 既に開きかけていた股を持ち上げられ、タイトスカートの隙間から下着を観察される。──既に濡れていることは影で見えないことを期待したが、千里眼持ちである彼に見えないなんてことはなかったとすぐに気がついて自分の鳥頭ぶりに恥じ入った。「穿いている意味があるのか?」と嘲る彼にだんまりを決め込む。そんなこと言われても、濡れた事実は変えられないので仕方ない。

 手を突っ込まれて下着の上から弄られる。……聞くに堪えない声が漏れていくのを止められないまま、私はシーツを握りしめる。直接攻められるのももちろん感じてしまうのだが、服の上から擦られるのも好きだった。下着の縫い目と敏感な突起が擦れ合って独特の感覚を生む。暫くされるがままになっていると流石にスカートは邪魔になったのか、下着と一緒に脱がされた。

 すると──驚くべきことに、ギルガメッシュは迷わず私の股の中へと頭を突っ込み、すんと一息臭いを嗅いだ。

「な……」
「やはりここが一番臭うな」

 そのまま彼は赤い舌をちろりと見せて、舐め回す。先程の指圧とは違う柔らかい感触に「んんっ……!」と高い声が上がった。

「ちょっと、そこほんと、汚い……」
「故に我手ずから綺麗にしてやっているだろう」

 手ずからというか口からだけど、という突っ込みを入れる程の余裕はもうない。洪水になりかけているそこと、彼の唾液を纏った舌が合わさりびちゃびちゃと水音を立てる。──絶対に変な臭いと味がするはずなのに、ギルガメッシュは舐めることをやめない。達したくてぴくぴくと跳ねている突起を舌で転がし、とろとろと半透明の液体を垂れ流す穴を啜る。

「あ、ぁあ、やだあ、ねぇ、ギル……!」
「ん……何だ。興奮しているのは貴様ではないか」

 腰を震わせ涙目で懇願すると、やっと彼は唇を離して股の中から私を見上げる。

「汚いよ……」
「ここまで来て恥じているのか」
「そりゃ、だって……いいものじゃないでしょ、それ」

 今の自分が耳まで真っ赤であろうことは鏡で見なくてもわかる。……悔しいが、私はギルガメッシュの思った通りの反応をしているのだろう。

「我の舌を信用せよ。女の垂れ流す蜜とは本来生臭いものだ」
「ゲテモノみたいな言い方じゃない?」
「言葉の通じぬ奴め。せっかく褒めてつかわしたというに。──では、我のこれも貴様は舐めぬのだな」

 言いながらギルガメッシュはパンツのファスナーを下ろして中から芯を取り出す。完全に勃ち上がっている、血管すら浮き出た状態のそれをつとなぞって、彼は意地悪く笑った。

「……いや、それは舐める」
「何故だ? 貴様のその股座は汚いのだろう。であれば必定、我のこれも貴様にとっては不浄ということになるが」

 ニヤニヤと、私のダブルスタンダードを指摘してくるギルガメッシュは本当にいやらしい。性的な意味ではなく性根が、である。

「あーもう、ごめんってば……舐めさせて……」
「ふん、腰抜け。自分が何を嘆願しているかわかっているのか?」
「わかってるってば、もう、っ」

 彼の眼を見ているのがいい加減恥ずかしくなって、私は起き上がって四つん這いになり屹立する彼の芯へと顔を近づける。途端、むわりと雄じみた──いつも嗅いでいるよりも何倍も酸っぱく感じる臭いが鼻を突いた。

 急にどくどくと鼓動が早鐘を打ち始める。元々こんなことをしているのだからきっと早くはなっていたけれど、その臭いを嗅いでから露骨に心臓が震え出す。

 そのまま舌を出して、おそるおそる彼の先端に触れてみる。しょっぱい。汗と体液の混じった、酸味のある味わいだった。そのままぱくりと咥えてちゅうちゅう吸う。「ふん……」と満更でもなさそうな息がギルガメッシュから漏れた。

 ああ──確かにこれは癖になる。決して美味なものではないけれど、普段に比べて彼の感じ方がわかりやすい気がする。根元に手を添え、頭を上下させてゆっくり、しっかり彼のものを愛撫していくと、褒められているのかギルガメッシュは私の頭を徐に撫でた。

 彼のものを舐めるのは好きだ。こうして頭を撫でてもらえるし、彼が気持ちよくなっていることもよくわかるから。それに、じゅっと時々強く吸うと、元々硬い芯がよりぎゅっと窄まって硬度が上がるのが楽しい。彼に抱かれると気持ちいいけれど、同時に知的好奇心……のようなものが刺激されるのが面白い。これもよく彼の言う「生きる愉しみ」に数えていいのだろうか? だとしたら、これで一つはもう見つけたことになる。ギルガメッシュと交わるのはやっぱり好きだ。

 ちゅぽちゅぽ、と上下運動を繰り返していると、彼は前髪をはらって顔を覗き込む。

「貴様、乾いていないか?」
「ふへ?」

 咽喉のことかと勘違いしかけるも、彼の手が私の下生えをなぞったことにより謎は解けた。……そんなのわざわざ確認しなくても自分が一番わかっている。芯から口を離して垂れっぱなしの唾液を拭うと、そのまま口づけられて、またお互いの体液で口元がぐちゃぐちゃになった。それすらもう、何だか気持ちいい。彼のものを咥え込んでいたうちに脳髄が溶けてしまったようだ。

「よい。このまま上に乗れ」

 ギルガメッシュが横になると同時にその上に四つん這いになって、とろとろのオムレツみたいな股を広げ、芯に宛がう。だが、ギルガメッシュから返ってきた言葉は意外なものだった。

「そこはまだだ」
「え? じゃあどうするの」
「反対に向け。褒美だ」

 彼の言っていることをよく理解しないまま、言われた通り身体ごと反転させると片脚を掴まれてびくりと肩が震えた。「な……に」と振り返ると、そのまま彼は私の股に顔を突っ込み再び舐め回し始めた。

「んんっ……!」

 突然の刺激に全身が震える。乾くどころかびしょびしょのそこを吸い上げられて、私はひんひんと動物のように鳴くしかなかった。

「あ、あ……ギル、これ……」
「どうした。貴様も存分に我のものを舐めよ。未だ足りぬだろう?」

 舌を振動させるのをやめ、ただただ与えられる気持ちよさに押し流されている私を彼はニヤニヤと──この体勢では見ることはかなわないけれど、絶対にそうだ──試す。……それは、確かにそうだ。私の顎が音を上げるまで彼を味わっていたい。

「でもちょっとこの体勢、恥ずかし……ふ、っ」
「なに、互いに快楽を味わえるのだ。些事は気にするな」

 そう言って彼は私の突起を指で弄り回しつつ、舌で穴の周りを刺激する。……そんな風に言われたら私もやるしかなくなってくる。

「ずるい、ずるい……ギル」
「であれば貴様も我を悦ばせよ」

 ギルガメッシュの言うまま、半ばやけくそで彼の芯に再びむしゃぶりつく。自分の敏感なところを舐められながら彼のものを咥えるのはひどく難しい。自分自身の気持ちよさに囚われて、彼への刺激をすぐ怠りそうになる。──でも、彼にされるがままになっているのは少しだけ悔しい。なので何とか声を上げるのをこらえながらもう一度根元に手を添えて、頭を上下に動かす。

 大きくて硬い彼の芯を私の口に全て収めるのは不可能だが、そこは仕方がない。無理に咽喉まで挿れて、嘔吐き歯を立ててしまう方が余程悪い。じゅっと先端から汁を搾り取るように口を窄めると、仕返しと言わんばかりに指を穴の中に挿れられる。彼の指の押し進め具合から、中が相当きついのだとやっと自覚した。

「ははは貴様、本当にこれで我のものを咥え込むつもりか?」
「っ、私に訊かないで……あ、待って、いきそ、ぁ……」

 そのままじゅるじゅる吸われると、突起から下半身全体へじんわりと快楽が広がった。深く息を吐きながら彼の玉袋を指で揉み、横から彼のものを拝む。流石に小休憩を入れないと私ももたない。

 勢いよく屹立しているそれは本当にご立派だ。今となっては愛撫と探求の対象ではあるものの、形はいつ見てもグロテスクである。初めて彼に抱かれた時、よくこれを見て「無理」と言い出さなかったものだなと以前の自分に感心した。

「ギルはいかないの……」
「溜め込んだ子種は余さず貴様の中に注いでやった方がよいだろう」

 身体を元の向きに戻し、彼の胸にすっぽり収まるように倒れ込むと同時にそう返されて、一瞬きょとんとしてしまう。……何だか大事なことを忘れているような? 私の気のせいだろうか。クエスチョンマークに脳内が支配されているなか、ギルガメッシュは手遊びに私の髪を指に絡めては離すのを繰り返す。彼は私の髪で遊ぶのが好きらしい。

「息が整うまで待ってやる。我が解してやったのだ、挿れてもつっかえはせん」
「そう……かなあ」
「怖じ気づいたか?」
「そういうわけじゃないけど……ギルガメッシュって男の人だなあって」
「それを言うなら貴様も女だぞ。女と言っても赤子同然だが」

 そう言われると、何だかおかしな気分だ。まあ、彼との情事に快楽はあっても色気……ロマンス? そういった類の雰囲気が漂わないのはそういうことなのだろう。彼にとって私は赤ちゃん同然。なら、この行為はセックスではなくて、児戯にも等しいのかも知れない。

 ……あ、何だかそれは嫌だ。

「ねえ」
「何だ」
「赤ちゃんじゃ嫌だ」

 そう言って彼に馬乗りになると、眉と口元を吊り上げてギルガメッシュは私を品定めするように眺める。

「私はあなたに抱かれたい」
「もう何度も抱いているではないか」
「そうじゃなくて。私はギルとセックスがしたい」

 恥ずかしいことを口にした自覚はある。でも、今言わないといけない気がした。
 ギルガメッシュは片目を瞑った後、「では」と切り返す。

「疾く乗れ」

 ──彼の言う通り、私は穴を指で広げながら彼の先端にくっつけた。早く挿入されたくて疼きが止まらなかった。聞き苦しい音を立てて先端が入り口に引っ掛かったあと、ぬるりとそれは私を押し広げていく。できるだけ力を抜いて腰を落とすと、何とか奥まで収まった感触がする。

「どうやって……動けばいい?」

 こうして彼の上に乗ると自分の好きなように動いてしまいがちなのだが、それでは彼が達せないのも事実だ。とにかく私はギルガメッシュとセックスしたい。彼と一緒に気持ちよくなりたいのであって、私の自慰に付き合ってもらいたいわけではないのだ。なのでそう訊ねると、「そのままでいろ」と言われ動く方の腕で太腿を掴まれる。へ、と戸惑っている内に彼が下から中を突き始めた。

「やぁっ、あ、ギル」
「どうだ」

 私の好きな浅い部分を中心に攻めている彼を見下ろしながら、思いがけず背を逸らして後ろに手を突く。脱ぎ掛けの下着が下からの振動で乳首に引っ掛かるのすら気持ちいい。奥まで挿入しておきながら私の指でも届きそうなところばかりを突くのは、一応処女に戻っている私を気遣ってのことなのか。

「きもちい……っけど、ギルは……?」
「白野。何やら愚鈍な思い違いをしているようだが、我は慈悲で貴様との情事に励んでいるわけではない」

 呆れた顔で彼は頬杖をつきつつ、腰を振ることをやめない。……私もそこそこ締め上げているのに、身体が童貞であるとは全く思えない余裕っぷりだ。精神体に染み付いた心構えやらテクニックやらはそのままなので当然なのだが、何だか私ばかり損をしているような心地がする。

「貴様は女でしかない」
「……そりゃ、そうだよ……っ」
「だが、女である以前に──」

 言いかけて彼は口を噤む。「いや、言うまい」そうもったいぶって、彼は急に奥を突いた。

「あ、……!」
「身をもって知れ」

 びくびくと跳ねそうになる腰と咽喉から一層面白い程に漏れる嬌声を、何とか押し留めようと努力するも、彼の執拗なピストンの前ではあまり意味がない。浅い部分も好きだが、奥を深々と刺されて擦られるのも堪らなく気持ちがよかった。身悶えして首を振ると、「弱音を吐くのは早かろう」と意地悪く笑われる。

「ギル、ね、どういうこと……」
「ふ……っ、我もそろそろ達するか。思ったより早かったな、っ」

 前後運動を続けながら、ギルガメッシュは至って冷静に自分の状態を判断していた。確かに彼との情事は大体私が何度もいってしまった後、彼も達するというのが定番の流れだった。ここでやっと彼の身体の童貞らしさが見えた気がする。私もそろそろ限界が近い。だけど──このまま彼の言いたいことを掴みかねた状態で流れで彼と致してしまってもいいのだろう、か?

 そう思っていると、彼は私に向けてとんでもないことを言い放った。

「貴様が赤子でないというのなら。──この胎に子を孕め」

 ──それは、まさか。

「あの……ねえっ、もしかして、この身体って」
「人形師の腕次第では、ということも……っ、あり得なくはないぞ?」

 瞬間、ぞわりと背中の毛が粟立つ。気持ちよさと怖さがごちゃ混ぜになって、怒濤の感情の濁流が私を押し流していく。

「や……っ、ね、ギル」
「何だ。やめるか? セックスがしたいと言ったのは貴様の方であろう」
「そ……れは……」

 正直、わからなかった。……そうだった。電脳世界の私の身にはその機能が備わっていないから、すっかり感覚が麻痺していた。何て浅はかなことを願ってしまったんだろう。でも、私が望んだことは、つまるところそういうことでもあった。

「──飽きた。風呂へ行くぞ、白野」

 そう言ってギルガメッシュは私から芯を引き抜き起き上がった。呆然と膝をついている私のタートルネックを引き、「うげ」と呻く私を強引に動かす。そうしてずるずると風呂場へ私の身体を持ち上げ引っ張った。何だか、身体から力が抜けてしまった。

「ちょ……ギル、まだ出してない」
「我を気にする暇があるなら頭を冷やせ」

 ……正論すぎて何も言い返せないのが悔しい。私は一体何をしているんだろう。半ば売り言葉に買い言葉のような調子で、事を推し進めた結果がこれか。随分と惨めな心地だった。

「……ごめん。やっぱり私、まだまだ子どもだね」

 脱衣所でずり上がっていたタートルネックと下着を脱ぎながら、ギルガメッシュに謝る。何を私は拘っていたというのか。きっと私達は今までうまくいっていた。彼の私の扱いは正しくて、私はそれを享受していればよかった。なのに。

「さっきのは、……何というか、私が子どもでも対等に扱ってもらいたくて出た言葉で……その」

 うまい言葉が思いつかなくてもどかしい。だけど、本当の気持ちだった。それだけで伝わったのか、ギルガメッシュは私の髪をわしゃわしゃと掻きやって頬をつねる。

「いたっ、なになに」
「たわけ。我と交わした誓いを忘れたか」
「え……」
「我と貴様は既に対等であろう。いくら我等のこの行為が大抵の男と女のそれに当てはまらぬからと言って、それの何が不満なのだ」

 そう言って彼はべりりと肩のサポーターを自ら外し、器用に黒いTシャツを脱いでみせる。
「──あれ!? 肩大丈夫なの!?」
「先程魔力供給されたようなものだからな。多少は動く」
「あ、そっか……ここでもそういうことになるんだ。じゃあ早くすればよかった」

 彼とはこういった行為を魔力供給という意味でしたことがなかったので、すっかり頭から抜け落ちていた。これは流石にマスター失格かも知れない。しょんぼりとしている私を横目に彼はさっさと風呂場の戸を開き、中へと入ってしまう。

「って、そうじゃなくて。待って、ギル」

 戸を開けたまま、彼は私が靴下を脱ぐのを待っている。真剣な顔だった。だから、私も急いで靴下を捨てて風呂場に足を踏み入れる。

「何だ」
「……勘違いしててごめん」

 素直な気持ちのまま謝って、私は彼の胸に頭を預ける。彼の胸筋は硬くてしっかりしていて、あたたかくて、とても安心する。彼は冷たい人ではないのだと、心からそう思える。

「私、ギルがすき」

 彼の背中に腕を回す。少し肌寒い風呂場の中で、ギルガメッシュが私専用の湯たんぽみたいにぽかぽかと私をあたためる。……こんなことを口にしたら彼に怒られそうだけど、そんな喩えしか思いつかなかった。私は嘘がつけないから。

「ギルのこと気持ちよくしたい。……そう、思っただけなの、んっ」

 ──そうして、彼に顎をくいと上げられた途端口づけられた。深くまで舌が入り込んでくる。そのまま両腕できつく抱きしめられながら私は彼にされるがままになっていた。流石に息ができなくなりそうだと思った瞬間ふと唇が離れて、私達の間に唾液が伝う。

「それでよい」

 ギルガメッシュは満足そうに笑って、シャワーの栓を捻った。

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