2032:STARRY-EYED
光の射さぬこの街にも朝があり、昼があり、夜がある。夜になったリアルワールドはより一層薄暗くて雨足も強まり、気温が下がる気がするけれど、それはただの私の思い込みなのかも知れない。 ギルガメッシュの腕時計の指し示すただ今の時刻は二十一時四十五…
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エピローグ 今日も雨は降り続く
──都市警察のデータセンターに入室許可が下りたのは、それから二週間近く経ってからのことだった。「短い間でしたが、ご苦労様でした」 デッカードから私達に用意された餞は、出会った時と全く同じにこやかな微笑みらしい。「それはどうも……」と私が多…
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Ⅴ 俺達に天国はない
ますます強くなるばかりの嵐の中を、デッカードの運転するスピナーが突き進んでいく。それを、少しずつではあるがギルガメッシュのスピナー──J‐007が引き離していく。器用にもデッカードは、先の特殊部隊への通信に応じて的確な指揮を執っていた。………
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Ⅳ 薪は二度とくべられない
雨足が、一段と強くなっている。 そう感じたのは俺の心の持ち様の問題だったのか、それとも本当にこの世界に嵐がやって来ていたのか。いずれにせよ、足下に纏わりつく水滴による不快感が増すだけの話だ。今更過度な感傷を憶える必要はない。これまで通り、…
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Ⅲ 出会わなければ終われない
今日も今日とて、雨が地面を叩く音は止む様子がない。 せめて雨足の様子に変化はないのだろうかと思ったけれど、この世界にやってきて十日ばかり経つ現在、あまり変わり映えのしない本降りが続いている。そして私達が置かれている状況もまた、大した発展は…
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幕間 明日はあると信じていた
故郷は以前噂に聞いていた通り、光の射さない雨の世界だった。 この暗闇の中で真っ黒なファーコートを羽織っていると、自分まで建物から落ちた影の一部になった気がしてくる。そう感じることはあながち間違っていないのだろう。あの星から逃げてきた以上、…
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Ⅱ 被造物に魂はない
錆びかけのエレベーターを上った先から見える街並みは、煙る雨の中である故か、より一層何もかもが猥雑に見えた。 しとしととささめくように地面を濡らす小雨ではなく、ざあざあと身体に吹き付けるように注ぐ土砂降り。私は蛍光オレンジのレインコート、ギ…
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Ⅰ ダイスロールは甘くない
窓越しに雨の降り続く音が耳を撫でている。 風呂場のシャワーのような、というと勢いが強すぎるような気もするけれど。傘を差さずに降られれば、ものの数秒で濡れ鼠になること請け合いの雨だった。もっとも、私達がいるのは建物の中なのでそんな空想はあま…
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プロローグ 一人だけ友人がいた
頭上ではオリオン大星雲が煌々と燃えている。 その下で、かつて人間だったものが明々と燃えている。 使いものになるかあやしいほど血に塗れた小刀と、先程殺めた職員から奪った銃をロザリオ代わりに握りしめる。そもそも、俺のような祈る神のいない存在が…
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