datura

ダチュラの偶像 表紙画像

御伽噺の続きを聴かせて

 ──という、夢を見たのだ。  口を噤んだまま、思わず周囲を見渡すがNPCの少女以外今の図書室には人影が見当たらない。もちろん、自分のマスター──殺生院キアラの気配もない。手元の羽根ペンと若干引き攣れてしまった原稿用紙をはたいて、俺は眠気覚…
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ダチュラの偶像

 曰く、天上には曼陀羅華と呼ばれる花が咲くという。釈迦や如来の説法にて、天より降り注ぐという美しい花。地上の花でたとえるならばその形は朝鮮朝顔であり、別名をダチュラ。──あなたは、ダチュラのような女ひとだった。 そうあなたに伝えると、あなた…
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此岸のトロイメライ

 嫌気がさす程清潔な、染み一つない白い天井を見上げる日々にも飽きが来る。食事も睡眠も、終いには排泄まで管理されるこの場所を人々は病院と呼ぶが、私にとっては監獄そのものだ。腹が立つ。嫌気がさす。だが、一番嫌悪をもよおさずにはいられないのは、そ…
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スティグマ賛歌

「ようこそお越しくださいました」 私を出迎えたのは、写真で見ていた通りの美しい東洋系の尼僧だった。 随分若い。東洋人は私達西洋人に比べ若く見えがちではあるが、それを差し引いても若すぎる。どれだけ年上に見積もっても二十歳がいいところだろう。も…
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ブルーバード=シンドローム

 物心ついてより、随分とつまらなそうな顔をした子どもだった。両親には「もっと子どもらしくなさい」とあきれ顔を向けられ、その度に減らず口を利いては怒られたものだ。子どもとは天真爛漫な笑顔を振り撒く生き物でなくてはならない、なんて誰が決めたんだ…
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そして私は人魚になった

 ──人魚は花嫁の夢を見る王子へ別れを告げ、海へと身を投げました。彼女の体はやがて泡沫と消えてゆきました。 物語は幕を閉じた。捲る頁はなくなった。鮮やかな蒼の絵の具が人魚の身体をほどき泡沫に変えてゆく。彼女の涙と泡沫が混ざり溶け合い、伝わら…